「かつて親を頼れなかった若者(イルミネーター)」が、「今、この瞬間も親を頼れずに苦しむ子どもたち」を救うため、自らの経験をスピーチするイベント「コエール2022」が、7月2日にオンラインで開催されました。
親を頼れない子どもの存在に光を当て、問題解決を目指そうと、認定NPOブリッジフォースマイル(B4S) が2019年から毎年開催し、4回目になります。
イルミネーター5人が登壇。今年2月から計7回のワークショップを重ね、イルミネーターを個別にサポートする社会人ボランティア(エンパワ)と一緒に、どうすれば、より多くの人たちに伝わるか、言葉を選び、スピーチ内容を練り上げたり、フジテレビのアナウンサー4人からスピーチ指導を受けたりしながら、本番を迎えました。
総合司会は、初回からおなじみのフリーアナウンサー町亞聖さんと、児童養護施設出身の俳優古原靖久さんが務めました。東京・お台場のフジテレビジョン「マルチシアターホール」から、テレビカメラ4台が構える中、ライブで配信しました。
イルミネーターのスピーチは別途ブログ記事でご紹介しますので、ここでは割愛しますが、イルミネーターがスピーチを終える度、司会の町さん、古原さんが心のこもった感想を述べました。
ところで、「コエール2022」には、全国から20〜30代の若者14人の応募がありました。運営メンバーが応募者一人ひとりと面談し、最終的に8人が登壇に向けて準備を進めてきました。最終盤になって、体調不良などを理由に3人が登壇を見合わせました。コエールでは、最終的に登壇するかどうか、イルミネーターの意志を尊重する約束で、参加いただいています。
👉「イルミネーターのスピーチ」については、順次ブログ記事にて公開します
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■呑ん「自信と勇気もらえた」 りゅうさん「世界はまだ変わっていない」
昨年の「コエール2021」でイルミネーターを務めた「呑ん」と「りゅうさん」が登壇し、フリートークに臨みました。2人は今年の「コエール2022」で「ジュニア・ボード」として、イルミネーターたちをサポートしました。
呑んは、昨年のコエールをきっかけに、当事者発信を始めました。「それまで虐待を受けていたことを分かっていなく、周りにも伝えていなかった」といい、「スピーチを聴いた周りの人が驚き、『これは、実は身近な問題なんだ』と気付いてもらえたことが、大きなことでした」と振り返りました。それまで制度や支援の申請について考えたこともなかったが、「コエールの場で、こんなにも多くの人に聴いてもらえるんだという自信と勇気があって、(支援措置の申請という)行動に出ることができました」と話しました。
りゅうさんは、コエールで社会に向けて大きなメッセージを発信しようと、希望に満ちあふれて登壇。「この1年、まだ届ききっていないところがあるという、悔しさ、もどかしさも感じていて、でも、今年のイルミのスピーチを聴いて、また希望に満ちた気持ちになれました」と話しました。現在は、動画投稿サイト「YouTube」でも発信。心ない言葉や批判を投げつけられるなど、当事者発信のリスクも感じつつ、「大変だけど、世界はまだ変わっていないので、こうした場で、当事者の声や力を借りなければいけないと感じる」と語りました。
■児童養護施設、どんなところ? ヤスくん訪問ルポを上映
「コエール」初登場の古原靖久さんは、5歳から18歳まで東京都内の児童養護施設で育ちました。「ヤスくん」の愛称で、テレビドラマやNHK「あさイチ」(リポーター)などに出演する傍ら、自らの体験をもとに動画投稿サイト「YouTube」で「社会的養護」の問題について発信しています。
「児童養護施設って、どんなところ?」。そんな疑問に応えるため、思い出の出身施設「聖友学園」(東京・杉並区)と、小規模・地域分散化に取り組む「星美ホーム」(東京・北区)の都内2カ所を訪ね、第2部冒頭、映像でレポートしました。
▶関連記事「児童養護施設って、どんなところ? 施設出身の俳優古原靖久さんが訪問ルポ」
■「大人たちにできることは?」 トークセッション
第2部は、里親やボランティア、企業など、さまざまな立場で支援に携わる人たちが、トークセッションで「里親」「ボランティア活動」「企業ができる支援」を柱に意見交換しました。
テーマは「親だけでなく社会で子どもを育てるには。他人の家の子どもに、大人たちは何ができるのか」。すでに「一歩を踏み出した人たち」に、始めたきっかけや思い、実際に取り組んでみた感想などを聞きました。
パネリストは、里親の石本忠次さん(メンターキャピタル税理士法人)、子ども支援ボランティアの佐々木玲奈さん(株式会社アールスクエア・アンド・カンパニー)、子どもの仕事体験や雇用を受け入れている馬渕将成さん(株式会社ナチュラルスタンス)、子ども支援団体をサポートしている日野綾香さん(PwCコンサルティング合同会社)の4人。いずれも、ブリッジフォースマイルの活動にボランティアなどで携わっています。モデレータは、「コエール2022」を主催するブリッジフォースマイルの林恵子代表が務めました。
▶里親 〝2周目の育児〟 「家族増える楽しさ」
石本さんは、里親になった経緯を紹介した上で、「家族が増えるのは楽しい。〝2周目の育児〟として経験を生かせる部分も多いが、実の子と違った難しさもある」と指摘。「里親になりたいものの、ハードルが高い」と感じる人たちが多い中、「特別養子縁組」と「養育里親」の違いを説明した上で、「養育里親については、以前に比べ、かなり条件が緩和されている」とアドバイスしました。
▶ボランティア活動 子どもと向き合い 「人として信頼されている実感」
「コエール2022」の運営にも携わる佐々木さんは、ボラティア活動の魅力について「一人の人として信頼されている、という関係性を築ける」と感じ、仕事で培ったスキルを活かせると実感できる点を挙げました。一方、仕事が忙しい時期などは、ボランティアに時間を割くのが負担に感じることも。「自分がいい状態でないと、周りの人にいい影響を与えられないので、自分自身を整え、律しつつ、ボランティアに参加するのが大事」と強調しました。
▶企業支援 採用「スタートラインは、みんな一緒」
馬渕さんは、社名の「ナチュラルスタンス」について「みんな、自然体で生きてほしい、との願いを込めている」と説明。さまざまな境遇の子どもたちを受け入れる際の基本姿勢として、「今のあなたを見ているからね。過去はいったん抜きにして、仕事をする上では、みんなスタートラインは一緒」。受け入れる際の心構えとして、「こちらの価値観を押しつけないこと。子どもたちの見たこと、感じたことを素直に受け止めてほしい」と助言しました。
▶企業支援 プロボノ「仕事の延長で、スキル活かせる」
日野さんは、社内のプロボノがNPO団体の支援プログラムに取り組むメリットとして「仕事の延長としてとらえられるので、子ども支援に不安のある人にもハードルが低い」点を強調。「努力したい、頑張りたいと思っている人が報われる社会にしたい」という思いが根っこにあり、社内から「もう一歩踏み込み、企業ができることを、主体的に取り組みたい」という意見が上がっており、新たな支援形態を模索していることを紹介しました。
■フィナーレ
前身の奨学金支援プログラム「カナエール」で審査員を務めた経験のあるモデルのアンミカさんの動画メッセージ【リンク:本番で上映された動画へ】や、SNSのハッシュタグ「#コエール2022」で寄せられた声を披露し、終幕しました。
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「コエール2022」終演後も、関連のさまざまなプログラムをご用意しています。
イベントで共有した課題やテーマについて、多くの人たちが一緒に考えたり意見交換したりする機会を積極的に設けながら、親ありき日本をこえ、みんなで子どもを育てる社会をつくるため、継続的に取り組んでまいります。
ぜひ、ご参加ください。
▶ソーシャルアクションアカデミーのご案内
親を頼れない子どもたちの課題を解決するため、協力団体であるNPO法人サービスグラントが主催し、8月に「ソーシャルアクションアカデミー」(第3期)を開催します。詳しくは、こちらをご覧ください。
▶コエール アフタートークセミナーのご案内
「コエール2022」を終えて一息ついたころ、今回のイベントを振り返りつつ、その舞台の裏側をお話するセミナーを開催します。
7月19日 (火)20時〜21時30分 無料・オンライン
丸の内キャリアママがNPO代表に転身・親を頼れない子どもたちの話〜啓発イベントコエール2022を終えて〜アフタートークセミナー
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