■これまでの人生を振り返ろう
「コエール2022」の第4回ワークショップが4月17日(日)、オンラインで開かれました。
今回から、いよいよ、チーム活動がスタートし、本格的にスピーチづくりに着手します。
本番当日にスピーチする若者(イルミネーター)1人と、個別にサポートしながら発表内容を一緒に考えていく社会人(エンパワ)2人の計3人が1つのチームを組み、計8チームがそれぞれ活動します。
この日はまず、「ライフラインワーク」に取り組みました。これまでの人生を振り返り、過去の記憶を整理するのがねらいです。過去の出来事をもとに「ライフラインチャート」をつくり、その時々の気持ちや決意が、今の自分にどんな影響を与えているのか、新たな気づきを得ようというものです。
また、同じチームの3人がそれぞれ自己開示し、「自分の過去」について共有しあうことで、お互いの理解を深めて信頼関係を築き、チームで「安心安全な場」をつくるねらいもあります。
さらに、イルミネーターのスピーチを練り上げていく上で、何を伝えたいのか、主題を絞り込み、骨組みを考える上でも、ライフラインチャートは重要な手がかりとなります。
講師の「やすみん」(事務局スタッフ、公認心理士)は、こう説明しました。
「記憶の『点』を『線』で結んでいくことによって、自分の人生を一つの『プロセス』として見ることができます。その中で、いま、自分のいる地点をとらえ、理解していくと、これから先の自分を描きやすくなります。自分の人生を振り返り、抱えている荷物を少し整理して、身軽になりましょう、というイメージです」
ライフラインチャートって?
✓これまでの人生を「幸福度」という尺度で1本の曲線に表したもの。自ら体験した重要な出来事を、その時の気持ちと一緒にシート上に点で示し、曲線でつなげます
✓新しいことを始める前、人生の転換期などに、過去の自分や生い立ちを見つめ直し、自己理解を深め、新生活への準備を助けるツールです
✓過去を整理して自己理解を深めることで、将来の自分を描きやすくなります
この後、チームごとに分かれ、ライフラインワークに取り組みました。それぞれ、自分のライフラインチャートを示しながら、自身の過去についてスピーチ。エンパワの中には、若いころに大けがをしたり、病気になった親を看病したり、決して平たんではなかった半生を語る人もいて、その時、どんな心境だったかなどを質問しあいました。一方、イルミネーターも、親から虐待を受けたり、周囲に助けを求めることができずに耐えしのんだりした経験を語り、その過酷さに思わず涙ぐむエンパワの姿もありました。
■「自己開示」と「当事者発信」 その心構えは?
「自己開示」をし、「当事者発信」をする上で、どんな注意が必要か。講師の「あーみー」(事務局スタッフ)が解説しました。
まず、自己開示や当事者発信について、当事者からの反応が、さまざまであることを紹介。「今のままでいいから、そっとしておいてほしい」「認知が広がると、規制も増えるから困る」など告知に消極的なものや、「カミングアウトは良いことみたいな風潮は圧がある」「別に弱者じゃないし」「一緒にされたくない」など一線を画すもの、「結局、目立ちたいだけ」「活動家(アクティビスト)の方ですよね?」といった冷ややかなものなどを挙げました。
一方、当事者として発信する際の心構えとして、自分を守ることの大切さや、受け止める側の心情への配慮のほか、他のマイノリティ当事者の置かれている状況に敏感になる必要性を強調。広告やCMなどでステレオタイプに描かれている「家族像」や「男女の役割」などについて、そこから外れる人たちがそれをどう受け止めるかを考え、〝普通〟とされていることを疑ってみたり、〝自分の普通〟に甘えないようにしたりするのが大切だとアドバイスしました。
自己開示には「事実(情報)の自己開示」と「感情の自己開示」があり、開示する段階も「初対面で差し支えない」というものから、「初対面では不安」「親しい人には話している」「誰にもいえない」など、さまざまなステップがあると説明。同じ情報の開示でも、相手や状況、その時の体調や精神状態などによっても異なってくること、自己開示の仕方によって受け止める側の心理も変わってくることなどを強調しました。
さらに、「他者から打ち明け話をされると、自分の同程度の重さ・深さを持つ打ち明け話を返したくなる傾向があり、「自己開示の返報性」と呼ばれると説明。参加者から「自己開示することで、『あなたを信頼してます』ということが伝わることもある」といった意見も出ました。
■より「伝わる」ために プレプレスピーチ
第5回ワークショップは4月24日(日)、オンラインで開かれました。前回から1週間かけて、チームごとにスピーチの原案を練り、「プレプレスピーチ」として発表しました。
コエールの運営メンバーが、より「伝わる」スピーチにするため、聞き手の視点で内容についてアドバイスする社会人エンパワの役割を説明。さらに、プレプレスピーチを聞いて、お互いに感想や気付いたことをフィードバックしあう際の心構えやコツなどについて助言しました。
具体的には、良かれと思ってアドバイスした言葉でも、受け取る側が「自分のことを否定された」ような気持ちになることもあるため、「あなたは、こうしてみてはどうか」といった「あなた」主語の「Youメッセージ」ではなく、自分がどう感じたのか、「私」を主語にした「Iメッセージ」で伝えたり、「より良くなるために」という視点でプラス面にアドバイスを加えたりする方法があることを紹介。さらに、昨年イルミネーターだった「ジュニアボード」の2人が、自分の経験をもとに、感想や助言をどう受け止めたらいいか、ていねいにアドバイスしました。
この後、イルミネーターが順番に「プレプレスピーチ」に臨みました。本番当日と同じ「5分」という時間の中で、ほかのイルミネーターや社会人エンパワ、運営メンバーを前に、実際にスピーチをするのは、この日が初めて。前回のワークショップで作った「ライフラインチャート」をもとに、わずか1週間でまとめた内容でしたが、初めてとは思えないほど堂々とスピーチをしたり、具体的な体験に基づきながら社会のかかえる課題についてもきちんと指摘したりし、社会人エンパワや運営メンバーから驚きの声が上がりました。
一方で、少し早口だったり、エピソードが簡潔だったりして、時間が余ってしまうケースもあり、そうした反省や課題、感想などをチームごとに共有し、次回に向けての活動内容について話し合いました。
■次回は「プレスピーチ」
次回の第6回ワークショップは、5月22日(日)にオンラインで開催します。
「プレプレスピーチ」に対するフィードバックをもとに、さらに1カ月かけて内容を磨き、次回ワークショップで「プレスピーチ」として発表します。ここでは毎年、フジテレビのアナウンサーが、発表の仕方や内容の伝え方などについて、プロの立場から助言します。