「コエール2023」でスピーチする若者「イルミネーター(イルミ)」と、一人ひとり個別にスピーチづくりをサポートする社会人「エンパワ」が、4月中旬、オンラインによる第2回ワークショップに参加し、各チームがそれぞれ取り組んで来た研究成果を中間発表しました。
イルミとエンパワは3月中旬に横浜市で、対面での合宿(1泊2日)を行い、「イルミ1人+エンパワ2〜3人」でチームを編成しました。各チームとも、イルミの生い立ちや経験をもとに、どんな社会課題に導くことができるかや、その解決法、スピーチで訴えたいことについて話し合いました。合宿後、関連する資料やデータを集めたり、専門家にインタビューしたりしながら、論点を深めてきました。
この日は、その中間報告です。まず、各チームの報告をもとに、全員で意見交換しました。
「虐待による影響力」をテーマにしたチームは、虐待によって身体面や精神・行動面に対し、どんな影響があるのか、専門家が調査・研究してきた内容を紹介しました。イルミは、自身の体験から「自分の存在を大切にされていない」と感じることで、感情のコントロールがうまくいかなくなることがあると指摘。虐待から子どもを守る際も、「いったん親元から引き離すだけでは不十分」「心のケアが必要」だと訴え、「他人事ではない」と考えてもらえるようなスピーチにしたいと話しました。
「支援の届きにくさ」をテーマにしたチームは、18歳未満で児童養護施設を退所し、家庭復帰した若者の困難と孤立や、その後の自立支援(アフターケア)と居場所づくりなど「支援の届きにくさ」について、現状を報告しました。家庭復帰者の方が「中退率が高い」ことや、生活面・精神面での行政サポートなどが行き届いていない点を挙げ、特に「義務教育終了後」の若者の抱える困難が放置されやすいと指摘。「居場所づくり」の重要性を強調する一方、制度ができても、どう届けるかという課題点についても触れました。
「居所不明児童」をテーマにしたチームは、住んでいた地域や家、通っていた学校から姿を消し、存在が分からなくなった子どもたちの問題を取り上げました。自身の体験や、過去に全国で報道された事件を紹介しながら、法整備が進む一方、統計上「急減」しているカラクリや、保護された後も長期にわたり影響が残ること、フランスや日本国内の事例などを解説。「見て見ぬフリをされた子どもたち」の存在を知り、「手を差し伸べてほしいこと」や「その行動で子どもの将来が変わること」などを訴えたいと話しました。
「若者の孤独」をテーマにしたチームは、「社会的養護」に限らず、若者全体に共通する課題について掘り下げました。孤独に関する国の統計調査をもとに、「相談相手のいない人」や「不安や悩みを相談すると相手の負担になると感じる人」ほど、孤独を感じやすいことを紹介。海外と比較したデータなどを踏まえ、「自助」が重んじられやすい日本では、頼ること・相談することに対するハードルが高いと指摘しました。「相談できない」「頼れない」ことが、さまざまなトラブルの入り口になりやすい、という意見も出ました。
中間報告に続いて、グループごとに分かれ、意見交換での指摘などを踏まえ、今後、不足しているデータや専門家の意見などを補っていくため、必要な追加調査やスピーチの方向性について、それぞれ議論しました。
その内容を再び全員で共有し、他のチームのメンバーと一緒に意見やアドバイスを出し合いました。
今後、それぞれのチーム活動を通じ、スピーチ案を練っていきます。
いよいよスピーチについてお互いに感想や意見などを伝えることが多いフェーズになってきました。できるだけ相手の自主性や自尊心を尊重しながら丁寧な進め方ができるように、私たちは毎回確認していることがあります。
ワークショップの中では、意見交換の際の助言など「フィードバック」の伝え方について、①自分がどう感じたのか「I(私)メッセージで②「より良くなるために」を伝える時は「プラス面+アドバイス」で—といった点について毎回改めて確認しています。
次回は5月、ワークショップ第3弾として、いよいよ各チームで作ってきたスピーチの発表第一弾と、他の当事者発信から「伝え方」を学ぶワークを行います。