2022年7月2日(土)に親を頼れない若者によるスピーチイベントを行いました。その一部を紹介し、社会的な背景とともに振り返ります。
リプトン/20代/女性
私は16歳の冬、療育手帳をもらいました。療育手帳とは、知能指数(IQ)がおおむね70以下の人に交付される手帳です。小さなころから同世代の人との大きな差を感じ、人間関係にも苦しんできましたが、療育手帳をもらったことで、「これが自分の個性だ」と安心することができました。また、子どもの世話をしない両親のもとでいつもおなかを空かせて留守番をしていましたが、17歳で児童相談所に保護され、里親家庭で暮らすことになりました。里親夫妻は両親から教わることのなかった洗濯や掃除など身の回りのことや一般常識を教えてくれ、そのことには感謝していますが、どうしても許せないことがあります。私の知的障害について、口にするのもつらいような言葉で繰り返し侮辱したことです。里親家庭のサポートをする担当者が定期的に家庭訪問してくれましたが、里親に設ける時間が50分に対して、私には10分。私の意見を聞いてくれる時間はなく、一方的に里親からの意見をぶつけられました。私は精神的に病んでしまい、2年後に自立してからの半年間は精神科で薬を飲んでいました。
国は、子どもはできる限り家庭的な環境で養育を受けるべきだとして、「施設養護」から里親などによる「家庭養護」への転換を進めており、里親への委託を増やすとともに、里親家庭への支援も強化しています。児童相談所は委託前に里親希望者にさまざまな研修を行い適性を見極めるだけでなく、委託される子どもの気持ちも大切にしつつ慎重にマッチングすることとされています。委託後にも、児童相談所や里親支援機関の担当者が定期的に家庭訪問を行い、必要に応じて里親と子どもの関係を調整することになっています。ですが多くの場合、担当者と話し合うのはもっぱら里親側で、子どもの話をじっくり聞く担当者は少ないようです。
厚生労働省が作成した里親委託ガイドラインでは、委託直後の2か月間は2週に1回程度、委託の2年後までは毎月ないし2か月に1回程度、その後はおおむね年2回程度家庭を訪問するなど詳細な支援方法を示していますが、子どもへの対応については「できる限り子どもに面会し、暮らしの状況や希望などについて聞く」とされています。主たる訪問先は里親であり、子どもへの面会は絶対必要とはされていないのです。里親委託の最優先事項は子どもの利益であり、里親家庭支援も、むしろ子どもを中心に考えるべきではないでしょうか。
立場の弱さや未熟さによって、自ら意見を表明しづらい子どものために、全面的に子ども側に立ち、その思いを丁寧に聞き取って他者に伝える「子どもアドボケイト(代弁者)」の重要性が言われ始めています。里親家庭で暮らす子どもたちにも、できる限り「子どもアドボケイト」を配置し、真に子どもに寄り添った支援につなげるべきでしょう。
里親家庭への支援について、4つ希望することがあります。1つ目は、里親と子どもに別々の担当者をつけること。2つ目は、時間制限を設けず、子どもの話をゆっくり聞くこと。3つ目は、里親と子どもが毎日記録をつけることをルール化すること。大人の前でうまく話せない子どもの状況を把握しやすくなると思います。4つ目は、里親家庭に対して、障害者に関する専門的なサポートや研修をすることです。小さな意見かもしれませんが、どこかに届き、私と同じ思いをする子どもがひとりでも減ったら嬉しいです。