7月21日に親を頼れない若者によるスピーチイベントを行いました。
その一部を紹介し、社会的な背景とともに振り返ります。
しんちゃん/20代/男性
小学生のころから学校でいじめを受けていました。家庭では両親がケンカばかりで、兄も僕に暴力をふるう。居場所がなくて地獄のような毎日でした。中1の時、クラス中から白い目で見られて本当に死にたくなった時、級友の1人がかばってくれ、もう少し頑張ってみようと思えるようになりましたが、しばらくしてその級友も姿を消しました。実は彼も家庭内暴力の被害者だったのです。あれから7年。いま僕は、子ども食堂づくりなど、「居場所のない子どもたちをゼロにする」運動に取り組んでいます。
学校でのいじめは年々増え、2017年度には過去最高の年間41万件に達しました。自殺に至るような深刻なケースも後を絶ちません。愛情深い家庭であっても、なかなか打ち明けづらいのがいじめの問題です。親がケンカばかりしているような家庭ではなおさら、子どもがいじめの傷を癒やす場所にはなり得ません。
41万件といういじめ件数は正式に認知された数であり、誰にも言えないままいじめに苦しんでいる子どもはもっと多いと考えるべきでしょう。
いじめだけではありません。家庭での虐待や暴力、貧困、孤独……。多くの子どもたちがさまざまな問題に直面し、居場所がないまま苦しんでいるのです。
近年急増している子ども食堂は、貧困対策としてスタートしたところが大半ですが、最近ではより幅広い地域交流の拠点として、多くの子どもや大人が集い、時には悩みを打ち明け合える「居場所」として機能し始めています。しんちゃんが自らの経験を生かして取り組んでいるのも、こうした居場所づくりですが、こうした事業には、資金も人手も不足しているのが現状です。
いじめで死のうと思ったあの日、かばってくれた級友から僕が学んだことは、『たった一人でも味方になってくれる存在がいたら、その人は救われる』ということです。苦しんでいる人の味方には、実は誰でもなれます。うつむいている子がいたら、「大丈夫?」と声をかけてください。何も教えてくれなくても、そっと寄り添ってください。そうすることで、何かが変わっていくと僕は信じます。
執筆 : 原沢 政恵
撮影 : 山村 隆彦