7月21日に親を頼れない若者によるスピーチイベントを行いました。
その一部を紹介し、社会的な背景とともに振り返ります。
あむ/20代/女性
母との暮らしは恐怖と暴力の連続でした。殴られ、蹴られ、刃物を投げられ、監視され……。でも、高1でついに自死を決意して保護されるまで、私がこの日常を虐待と受け止めることはありませんでした。学校の先生や近所の人は何度か私たちのことを通報し、児童相談所の方と面談したこともありましたが、「しつけ」という母の主張が通り、保護されることはなかったからです。母は、一人で働きながら私を育てなければならなかったプレッシャーで虐待に走ったのだと思いますが、今もまだ、私にとって生きることはつらく苦しく重たいものです。
児童虐待の相談件数は2017年度に13万件を超え、過去最多を更新しました(18年度にはさらに増えて15万件超)。ですが、そのうち児童相談所が子どもを一時保護したのは16%の2万件強。一時保護からさらに児童養護施設などに入所したのは、4%の約4800件にすぎません。
児童虐待の深刻さが広く知られるようになった結果、虐待とは言えないような事案で通報されるケースも増えています。ですが、実際に深刻な状況で通報されたにもかかわらず保護されない子どもがいることは、数々の悲惨な虐待事件で明らかです。
そして、虐待する親の多くは「これはしつけだ」と主張します。児童相談所も、子どもの身が危険だと判断されない限り、ある程度その主張を受け入れてきた面があります。
最近起きた千葉県野田市の虐待事件などを受け、親による体罰が法律で明確に禁止されることになりましたが、体罰を容認する人はまだ多くいます。また、子どもを虐待する親の中には、経済的困難や過労、孤立感、子育てに関する周囲からのプレッシャーなどさまざまな悩みを抱え、そのストレスを子どもにぶつけてしまうケースも少なくありません。虐待を非難するだけでなく、親の悩みに手を差し伸べることで、虐待を防げる場合もあるのです。
私を虐待した母を許すことはできませんが、母の頑張りや苦しみも私は知っています。虐待は社会全体の責任です。これ以上悲しい事件が起こらないよう、あなたはどう行動しますか?
執筆 : 原沢 政恵
撮影 : 山村 隆彦