7月21日に親を頼れない若者によるスピーチイベントを行いました。
その一部を紹介し、社会的な背景とともに振り返ります。
まなみ/20代/女性
両親が病弱で、児童養護施設と実家を行き来して育ちました。中学生の時に母は亡くなり、同居した父の知人は暴力的でした。誰かに甘えたり弱さを見せたりしてはいけない。これ以上自分が傷つかずに済むよう、傷つけられるより傷つける側に回らなくてはいけない。そう信じるようになった私は、施設でもそっけない態度で振る舞い、時には強い言葉で周囲に当たり、怖がられる存在になっていました。このままではいけないと思っても、どうしていいかわからず、葛藤と孤独感を抱えて生きるしかなかったのです。
子どもは、親など特定の養育者に愛され、守られて育つことで、養育者との間に深い絆(愛着)をはぐくみます。その愛着を基礎として他の人々をも基本的に信頼し、適切にかかわっていけるようになるのです。逆に親から虐待を受けたり、さまざまな事情で十分な愛情を与えられないまま育つと、人と接することがうまくできなくなってしまいます。
そうした子どもたちの中には、人見知りをせず誰にでもべったりなついてしまう子がいます。相手の顔色を見て気を使い、何とかして好かれよう、愛されようとするのです。一方、逆に人を拒絶し、傷つけるような言動をする子もいます。愛されなかったつらさから、人を拒絶することで自分の心を守ろうとするのです。どちらにせよ、人づきあいがうまくいかず、仕事やプライベートでトラブルが起きがちであるなど、さまざまな面で生きづらさを抱えることになります。
この生きづらさを乗り越えるためには、信頼できる人に出会ったり、安心できる居場所を見つけたりして、少しずつ心を解きほぐしていくことが必要です。
ありのままの私を受け入れ、分かろうとしてくれる方々に職場で出会えたことで、私はやっと人に甘えたり頼ったりできるようになりました。私のように生きづらさを抱えた人がいたら、どうか力になってください。専門的な知識や技術はいりません。自ら歩み寄り、自分をさらけ出してくれれば、相手はあなたに頼ってもいいと感じます。まずはあなたから一歩、踏み出していただけないでしょうか。
執筆 : 原沢 政恵
撮影 : 山村 隆彦