7月21日に親を頼れない若者によるスピーチイベントを行いました。
その一部を紹介し、社会的な背景とともに振り返ります。
ゆーせー/10代/男性
今は夢を叶えるために頑張っていますが、児童養護施設に入所するまでは苦しい日々でした。中でもつらかったのは、小学生のころ従兄弟から受けていた性的いじめです。服を脱がされヒモで縛られて……嫌だと言うと脅され、小さな物入れに閉じ込められる。唯一の肉親である母は病気で心配をかけられませんでしたし、性的いじめのことが人に知られるのも怖くて、誰にも相談できませんでした。そんな状況でふさぎ込み、学校にもほとんど行けませんでした。今でも当時のことを思い出して過呼吸になることがあります。
児童虐待相談件数のうち、性的虐待は1%程度とごくわずかです。虐待以外の一般の性犯罪(強制性交、強制わいせつなど)も、犯罪件数全体の1%未満にすぎません。ですが、性的被害の最大の特徴は、表面化しにくいことです。法務省の調査では、性的な事件の届け出率はわずか18.5%。被害者の81.5%は届け出をせず、泣き寝入りを余儀なくされているのです。
事件が表面化することで、被害者がさらに傷つく可能性の高いことが、その主な理由と言えるでしょう。人格や尊厳を踏みにじられる性的被害は、人に知られること自体がつらく、恥ずかしいと感じがちなものです。しかも、「言うなりになったほうが悪い」「派手な格好をしているから」「本気で抵抗しなかった」などと被害者が見当違いの非難を受けることすらあります。
被害者が男性である場合は、なおさらかもしれません。性犯罪は長く、男性が女性に行うものであると決めつけられてきました。2年前の法改正で男性の被害がようやく法的に認められるようになりましたが、いまも表面化しない被害は多くあるとみられます。
私のように誰にも言えずに苦しんでいる子はたくさんいるはずです。学校ではよくいじめ調査をしますが、訴えてもどうにもならない、と諦めている子は多いと思います。親や学校の先生だけでなく、さまざまな大人が子どもに寄り添うことが大切です。当事者の絶望に気づいてください。彼らが大人に頼っていいんだと思えるような環境を作ってください。
執筆 : 原沢 政恵
撮影 : 山村 隆彦